ほっくりおいしい秋の味覚、東広島から羽ばたく落花生の収穫&試食体験
体験レポート

ほっくりおいしい秋の味覚、東広島から羽ばたく落花生の収穫&試食体験

2022/10/31 14:00

おつまみの定番である落花生

お菓子に入っていたり、料理に使われることも多いため、私たちの生活に馴染み深い食材です。


そんな落花生の栽培に力を入れるのが、東広島市八本松「アグリ・アライアンス株式会社(脇農園)」

他に類を見ない栽培方法を用いた落花生は、味も栄養も満点だと好評です。


収穫体験にプラスして、茹でたて落花生の美味しさも味わえた、スペシャルな1日の様子をお届けします。



アグリアライアンスの落花生収穫体験

落花生を広島の特産品に!産地化目指し未来を創る



山陽道の志和インターから南西に向かって車を走らせること約20分。

山々に囲まれた自然豊かな賀茂大地に広大な畑を構えるのが「アグリ・アライアンス株式会社(脇農園)」です。




こちらでは、東広島を代表する野菜である白ネギ、そしてナスアスパラガスを主軸に広島県での栽培は珍しい落花生に特化した農業を営んでいます。


落花生の生産をスタートしたのは2018年のこと。

白ネギの連作障害対策として、土壌の環境を変えようと選んだ落花生栽培が実を結び、現在の年間収穫量は約8トンまで成長しました。




しかし同園は、更なる高みを目指しています。


「落花生を新たな広島の特産品にしたい」


日本での落花生流通量は、全体の約90%が外国産です。

いまや国産品は希少な存在。そんな状況を打破すべく「アグリ・アライアンス」では、広島エリア全体の産地化を目指し、栽培ノウハウを蓄積中だといいます。




こだわりの落花生づくりにチャレンジしているのは、同社の脇伸哉(写真左)さん、弟で主に加工品を担当している元シェフの大輔さん。そして、広報や経理、農作業までこなす妻の智美(写真右)さんです。


伸哉さんの父の代から続く畑を引き継ぎ、5年前に法人化。

土づくりにこだわった減農薬野菜の栽培に、積極的に取り組んでいます。




社名のアグリは農業、アライアンスは同盟や連合を意味します。

その名の通り、おいしい野菜づくりを共にするのは、伸哉さんが大切にする仲間たちです。家族はもちろん、カンボジアからの実習生、新規就農を目指す若者など12名の従業員が集結。信頼関係の構築にも心を配り、誰もが働きやすい環境を整備しています。


今回の体験は、同園の皆さんによる万全のサポート体制のもと開催。それでは早速、収穫体験の様子を覗いてみましょう。



土に触れて自然を楽しむ落花生の収穫体験



秋深まる中、夏のような晴天に見舞われた10月15日。

集まったのは、東広島市、広島市から訪れた家族、総勢34名です。


「皆さんに収穫してもらう落花生は、おおまさりという品種です。大きさは、一般的に見かける落花生の1.5倍から2倍。茹でて食べるとのような味わいを楽しめます。今日は収穫後に、昨日採ったばかりの落花生を茹でて食べてもらいます。そして、落花生豆ご飯も炊いて用意しています。楽しみにしていてくださいね!」


伸哉さんの挨拶に期待が高まります。収穫に加え、新鮮な落花生を大自然の中で味わえる貴重な1日のスタートです!




ところで、落花生はどのように生るのでしょうか。

意外と知らない落花生の生態を、伸哉さんが丁寧に説明してくれます。


「落花生は漢字で『花が落ちて実が生まれる』と書きます。文字どおり、6月に黄色い花が咲いた後、そこから子房柄が伸びてきて土の中に刺さります。子房柄の先が大きくなると、鞘ができ、その中で実が育ちます」


豆といえば馴染み深いのがえんどう豆や枝豆です。落花生も、それらの豆のように枝にぶらさがって成ると思う方も多いでしょう。

しかし落花生は土の中で成長するため引っ張るように収穫します。まだまだ知らないことがたくさんある落花生の世界。早速、大興奮の収穫作業へと進みます。




まずは、カンボジア実習生の皆さんがお手本を見せてくれます。

茎をひっぱって、スルスルと早いスピードで引き抜いていく様子を見ると、初心者でも簡単にできそうです。




しかし未体験の大人が普通にひっぱっても、うまく抜けない土の中の落花生。

あちこちから「よいしょ!」という声が聞こえてきます。簡単に見えましたが、力とコツのいる大変な作業です。


ここで必要なのが、網目のように張り巡っているの見分け方。落花生は、茎がネットワークのように一株単位の集合体になっています。


「上から見て、茎の先端を探してください。その両脇を持って引き抜くと、比較的簡単ですよ」と伸哉さん。




そのアドバイスに従うと、土から剥がれるようにスルッと落花生が出現!

その大きさと自分で出来た達成感に、子どもたちの顔は驚きと喜びの顔でいっぱいに。実習生の皆さんも子どもたちを見守り、時には優しく手を差し出してくれます。




「見て見て!大きいのとれたよ!」


茎と根の長さを足すと、子どもの背の高さほどある大きさにびっくり!半年ほど土の中で栄養をたっぷり付けながら育った落花生は、見た目の迫力も満点です。




大人も子どもに負けじと、作業を進めていきます。

じゃらじゃらと出てくる鈴なりの落花生に皆さん終始大喜びです!




株を引き抜いたら、落花生を一粒ずつ摘み取っていきます。

「上手にとれたよ」と3歳の女の子。満面の笑みは、まるで太陽のようにキラキラ!




こちらでは、何やら細かな作業を進行中。

何をしているの?と聞くと「3つ入っている落花生を探している」とのこと。


ひと房に3粒入った落花生はなかなかのレアもの。まるで四葉のクローバーを探しているようです。見つけた者に幸運をもたらすといわれる4枚の葉っぱならぬ3粒の落花生探し。幸せの3粒落花生、見つかったかな?




参加者の皆さんには、1人1枚の持ち帰り用ネットが配布されます。


「入れられるだけ、たくさん詰めてくださいね」と伸哉さん。おうちに帰っても、とれたて落花生を楽しめるのも楽しみのひとつ。ギュギュッと詰まった落花生を入れたネットを、大切に抱える子どもたちの姿は、なんとも愛おしいものでした。



こだわりの土づくりと独自のハウス内天日干し



「アグリ・アライアンス」の畑の土を見ると、見た目も触り心地も、一般的な畑とは様子が異なります。

は少し黒く、触るとフカフカの心地よさ。この土の秘密を伸哉さんが話してくれました。


「当社では『全ての実りは健全な土作りから』をモットーに、土を最も大切にしています。畑には、植物性発酵有機肥料(バーク堆肥)を通常の5倍使用。化学肥料はほとんど使わず、堆肥の力で野菜を育てているんです」


また、畑の下には土地の水はけを改善する排水パイプが埋まっています。ゲリラ豪雨が襲ってくれば排水。逆に雨が降らない時は貯水ができるよう整備され、最適な土を保つ環境が整っているのです。




「野菜をつくるのではなく、土をつくるのが仕事」


この言葉は、還暦を機に農業を始めた伸哉さんの父、伸男さんからの教えです。

「野菜は土から栄養分をとります。健康な土からでないと健康な野菜はとれません。土づくりは、絶対に手を抜けない作業です」と伸哉さん。


バーク堆肥によって酸素と微生物をしっかり含んだ土から生まれるのは、栄養成分の高いおいしい野菜です。


「当たり前だった本物の味を届けたい」と、使命感を燃やす伸哉さん。

大人も子どもも皆が安心して食べられるものを作りたいという強い信念が伝わってきます。




もうひとつ「アグリ・アライアンス」の落花生がおいしい理由があります。収穫後にハウスの中で行う天日干しです。


通常、収穫後の乾燥工程に用いられるのは、落花生の塊を畑に積んだボッチと呼ばれる方法です。しかしこちらでは、落花生の水分量を最適な状態にして旨み成分凝縮するため、ビニールハウスの中で一カ月半もの間、じっくりと乾燥させます。


このように、手間ひまかけた作業と愛情が、落花生一粒ひとつぶに詰まっているのです。


収穫後、希望者にはハウス見学も用意されていました。高く積まれた落花生の間にできた道は、子どもたちにとって楽しい迷路のようです。



とれたてをいただく秋の落花生パーティー



時間は午後に近づき、そろそろお腹が減ってくるころ。収穫後は、お待ちかねの試食タイムの始まりです。


落花生は鮮度が命。塩茹で落花生は、この時期にしか食べられない秋の味覚です。

口に入れると、ホクホクした食感と適度な歯ごたえ、そして栗のような優しい甘みが広がります。


水に対して2~3%の塩を入れ、生落花生を投入し、約30分から40分茹でるだけの簡単レシピ。新鮮な生落花生が手に入ったら、ぜひお家でも試してみてください。




9歳の男の子は、普段からピーナッツが大好き。

しかし剥いた状態でしか食べた経験がなく、今回「自分で殻を剥いで落花生を食べてみたい」との思いで参加したとか。


初めての茹で落花生を食べて一言。

「おいしい!想像していた味と違う。甘いんだね!」


茹でたての落花生は絶品!殻はもちろん、中の実も大きくぎっしりと詰まっています。




更に用意されていたのは、炊き立ての落花生豆ご飯です。


お米は東広島で農業を営む「ふぁーむたかちゃんち」「にこまる」を使用。

化学肥料7割減、農薬7割減の安心かつ安全な特別栽培米です。ほんのり塩味とほっくりとした食感、甘みが美味しい落花生のご飯は、この時期だけのお楽しみ!




食べ物以外にも、落花生の殻を煮出してつくった落花生茶、ノンカフェインの玄米珈琲などが振舞われました。

青空のもとピクニック気分で秋の実りを十分に堪能できた大好評のおいしい時間。


「この人たちが一生懸命作ったんだな」と思いながら食べると、感謝の気持ちからごはんのおいしさが格段に変わってくるものです。



農業を通して考える好循環と優しい世界



お腹がいっぱいになった後は、ミニマルシェが開催。

焙煎された落花生や、同園で育ったナス、生落花生の量り売りが行われ大盛況!


体験イベントに参加していない方も、情報を耳にして訪れ、キロ単位で新鮮な生落花生を買い求めていました。




「地元で落花生がつくられていることを、まずは身近な地元の人に知ってもらいたいですね。


加えて当社だけでなく、工夫を凝らして頑張っている若い農家が広島に増えています。皆さんには、可能な限り地産地消を意識して野菜を選んでいただければ嬉しいです。遠くのものより近いものを。個人でできるSDGsだと思います」と伸哉さん。


地産地消。それは新鮮な地元の農産物を食べられるだけでなく、食材を長距離輸送する必要がないため、CO2 の削減にもなります。おいしく、体に優しく、環境にもいい。小さな一歩、明日から始められそうです。




畑では命がどうやって育つのかを直に見ることができます。

暮らしに欠かせない食べ物が作られている現場。農家がどんな場所でどんな仕事をしているのかなど、教科書では学べない、自然の面白さを知れた貴重な1日した。


まだ小さな子どもたちには理解が難しいこともあるでしょう。しかし、今回の落花生収穫体験は、実りのある大きな一歩となったはずです。


そして、土づくりに力を入れる「アグリ・アライアンス」の挑戦とアプローチは、業界や地域に新しい風を吹き込むことでしょう。


「落花生といえば広島」


そんなおいしい未来は、そう遠くないかもしれません。


落花生収穫体験の詳細情報

施設情報

施設名アグリ・アライアンス株式会社(脇農園)
住所東広島市八本松町原4595-2
電話番号082-429-3733
公式HPhttps://agri-alliance.com/

落花生収穫体験&とれたて試食会

時間3時間程度
定員約30名
体験料大人2000円、子供500円
開催日毎年10月中旬
(落花生の収穫時期にあわせて前後)
予約方法ディスカバー東広島WEBサイト
※募集開始後、予約ページを掲載予定

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