巨大な船が海に浮かぶ大迫力の進水式|壮大なスケール感に感動!
体験レポート

巨大な船が海に浮かぶ大迫力の進水式|壮大なスケール感に感動!

2022/09/13 16:00

さまざまな物資を運搬し、私たちの足となって生活を支える船。


瀬戸内海は、そんな船を建造する造船所が集積する地域でもあります。

建造工程の中で、最も華やかといわれるのが「進水式」と呼ばれる行事です。


今回は、東広島市安芸津町の「新来島広島どっく」にて8月26日に開催された、進水式と造船所見学会の様子をレポート。

滅多に立ち会えない記念すべき日は、一生忘れることのない感動的な1日となりました。



新来島広島どっくの進水式と造船所見学

日本の海運を支える安芸津町の造船所



東広島市南部、瀬戸内海に面する安芸津町。

そのほぼ中央部、三津湾に面するのが「新来島広島どっく」です。


愛媛県今治市に本社を置くこちらでは、長さ約160mまでの中型鋼造船の建造を主に手掛けています。

現在の年間建造数は約3~4隻。多種多様な船を造っていますが、特に液体化学薬品を運ぶステンレスケミカルタンカーの建造を得意としています。


同グループ内で造るステンレスケミカルタンカーは、なんと世界ナンバーワンのシェア数を誇るとか!




今回参加したのは、市内外から訪れた23人の家族連れの皆さんです。


広い敷地は、なんとマツダスタジアム約5.7個分

巨大な建物と、空に向かってそびえ立つ大きなクレーンに圧倒されます。人がミニチュアに見えるほど、目に入る全てがダイナミックな大きさです。




案内してくれたのは、副工場長の山本照男さん。

1983年の入社以来、数多くの船の建造を経験してきた、まさに船のスペシャリストです。


「見学を通して、特に子どもたちに海事産業へ興味を持ってもらいたいですね。そうして将来、船を造る職業に就いてもらえたら。自分が携わった船が世界中を走っていると思うと、とても誇らしい気持ちになりますよ」


それでは、造船一筋で培った技術力を間近で感じられるツアー、いざスタートです!



見上げるほど大きい船を目の前に



まずは本日の主役となる船の見学へ。


ハレ舞台である進水式を間近にした船には、くす玉やフラッグなど、カラフルな装飾が施されています。

想像はしていたものの、やはり大きい!近くに行けば行くほど、改めてその巨体に圧倒されます。




「この船は、総トン数約9990トンの一般貨物船です。進水時の重量は普通乗用車で換算すると、約2900台分になります」


船に触れる機会がなければ総トン数の意味を直感的に理解するのは難しいものですが、山野さんの具体的な数字を用いての説明に、参加者の皆さんにどよめきが起こります。




また、上下に分かれた馴染み深いツートンカラーにも、船の秘密が隠されています。


基本的にこのような船舶の船底部分は赤い色。これは、藻やフジツボなど海の生物が付きにくい「亜酸化銅」の色だそうです。なんと初耳!船の劣化を防ぎ、安全に航行を行うための色なのですね。




記念撮影タイムがしっかり設けられているのも嬉しい見学会。大きな船をバックにした写真はなかなか撮れない貴重な機会です。東広島市から参加した9歳の男の子と7歳の女の子、そしてお父さんも、初の進水式にワクワク!


「船が大きくてびっくり!進水式は初めて見るから、すごく楽しみ!」


今回の進水式は、約4.5度の勾配を利用した「ローラー式」で行われます。

現在主流なのは、注水して船を浮かべる「ドック進水」。大きな船体が船台から水面へと滑り下りていくという伝統的な進水式は、現在では減りつつあるといいます。


後に控える進水式に、より一層の期待が高まります!



工場見学で知る世界に誇る造船技術



その進水式の前に、敷地内の一部を見学。ここは、組立工場


切断された部材を使って、船を構成するブロックパーツを組み立てる場所です。




ブロックといえど、おもちゃのように小さくはありません。

ひとつひとつのブロックは、まるで一軒の家のようなスケール感です。これらのパーツを約100個も組み合わせ、1隻の船が完成するそうです。




お次は、内業工場

設計図どおりに、鋼板を切断・加工し、船を構成するブロックを造るためのパーツを製作しています。大きさの違う、たくさんの鋼板を数万点組み合わせて1つの船が完成するのだそう。




ふと上を見上げると、クレーンを動かす従業員さんが、笑顔で子どもたちに手を振ってくれていました。

完成した船の堂々たる姿は、造船所内で働くたくさんの人の知恵と手があってこそ。


1隻の船に、どれだけの人の思いが積み込まれているのか。

そんなことを考えていると、ギュッと胸が熱くなりました。



巨大船が海へ!心震える華やかな進水式



さぁ、待ちに待った進水式がスタートです!


従業員の方々の間に、ピリリとした緊張感が走っているのが伝わります。参加者の皆さんも門出の瞬間を見逃さまいと、 固唾を呑んで、船が動くのを待ち構えます。




船の前に設けられた紅白の式場では、厳かに儀式が進行しています。




船の命名が行われたのち「進水準備、完了報告!」と威勢のいい声が響きます。従業員の皆さんのキビキビとした動作に見惚れていると「進水作業、開始!」の声。


こちらからははっきりと見えませんが、進水する船と船主及び関係者がいる式場をつないでいる「支綱(しこう)」と呼ばれる一本の綱があります。これを支綱切断者と言われる方が「銀の斧」で切断します。この斧には神様が宿り、悪霊を振り払うといわれているそうです。


「ただいまより、支鋼切断を執り行います!」


この一声の後に待っていたのは、とてつもない感動的な光景でした。




支綱に繋がれていたシャンパンのボトルがパリンと割れ、くす玉から大量の紙テープが出てきます。




くす玉、そして船体の左右からもたくさんの紙テープが飛び出し、空に舞います。

その数なんと200本!


船は、大きなサイレンと花火の爆音とともに、船尾から一気に海へと滑り出します。


参加者さんから「わぁ!」という感嘆の声が!




あっという間に船は、大海原へ。 圧巻のクライマックスです!


滑り出してから着水するまで、約1分。その光景はまるで、映画のワンシーンのよう。

参加者の皆さんも、誰に言われることなく、船に手を向かって手を振り続けていました。


形のないものが多くの人たちによって、船という形になり、そして進水していく。

新たな船が誕生する瞬間に立ち会えたことは、一言では言い尽くせない喜びがあります。


心が震え、胸がいっぱいになり、ちょっとだけ涙が出てしまったのは、ここだけの内緒話です。




進水式と工場見学で得たのは、「新来島広島どっく」が長年培ってきた造船のノウハウと、船への溢れる情熱でした。

食料、資源、工業生産品など、日本に輸出・輸入する荷物のうち99.6%は船舶によるものです。


つまり、日本においても、世界においても、造船業はかけがえのない技術


瀬戸内の海から、世界の海へ。


とても晴れやかで感慨深い進水式。次回の開催を、どうぞお楽しみに!



詳細情報

施設情報

名前(株)新広島来島どっく
住所東広島市安芸津町三津5563−5
電話番号0846-45-1280
公式HPhttps://www.skdy.co.jp/

せとうちの伝統産業!進水式と造船所見学

所要時間2~3時間
定員30名程度
見学料無料
予約方法ディスカバー東広島WEBサイト

※次回、開催情報はディスカバー東広島WEBサイト又は公式LINEからご案内します。


お問い合わせはこちら

新来島広島どっく

https://www.skdy.co.jp/


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