東広島のご当地グルメ「美酒鍋」|名前に隠されたおいしさの歴史
今や東広島のご当地グルメとして県内外に知られる美酒鍋。
毎年秋に開催される「酒まつり」で振る舞われ、東広島市内では10店を超える飲食店で提供されています。
そんな美酒鍋はいつ、どこで、どのように誕生したのでしょうか。
賀茂鶴酒造の広報担当であり唎酒師でもある、新谷ゆみさんに美酒鍋の誕生エピソードを聞きました。
賀茂鶴生まれ酒蔵育ち、起源は石川五右衛門!?
美酒鍋の誕生は、終戦まもなくのまだ食糧難の時代。
賀茂鶴酒造の当時の専務だった石川和知(いしかわかずとも)さんが、「蔵人にも腹いっぱいの料理をたべてほしい」と考案した料理と伝えられています。
ちなみに当時は石川専務と同じ苗字の石川五右衛門にちなんで「五右衛門鍋(ごえもんなべ)」と呼ばれていたそうです。
五右衛門鍋が、なぜ美酒鍋と呼ばれるようになった?
蔵人の作業服がビショビショになることから、蔵人のことを愛情込めて「びしょさん」と呼んでいました。これにちなんで「びしょ鍋」と言われるようになったとのこと。
新谷さんによると、約20年前は社内でまだ「びしょ鍋」と呼ぶ人もいたそうです。
その後、美酒という字があてられ、読みやすく「美酒鍋(びしゅなべ)」と命名されました。
蔵人が心待ちしていた、週に一度の“鍋の日”
今も昔も、酒造りは寒さとともに本格化。
寒い中での水仕事なうえに重い荷物も運びます。もろみや麴の状態を3時間おきに確認するなど、不規則な生活も強いられます。
厳しい酒造りの合間に、手早く体力を養うことができるまかない料理として「美酒鍋」が出されていました。
鍋に鳥の砂肝を主体に、あり合わせの白菜やネギを入れ、塩とコショウ、目の前にあるお酒で味を付けた料理でした。寒い季節の温かい鍋は、蔵人たちの心と体を癒したに違いありません。
ベテランから若い蔵人までが一つの鍋を囲むことで、悩みを語り合い、意見を出し合い、信頼を深めていくのにも一役買っていたようです。貴重な鶏肉を食べられるとあって、当時の蔵人が週に一度の鍋の日を心待ちにしていたという話が残っています。
脂肪分が少なくヘルシーで旨味もある鶏肉を使用
鶏肉でも、当時はもつ(内臓)を使っていたそうです。
美酒鍋が広まる中で、より旨味が強い砂ずりになったのではないかと考えられています。
シンプルな味付けは、利き酒に影響がでないための工夫
昔の美酒鍋は、砂糖や醤油を使っていません。塩、コショウ、お酒だけを使ったシンプルな味付けにしたのは、きき酒に影響が出ないようにするための工夫でした。プロ意識ですね。
現在の美酒鍋には、塩とコショウ、日本酒に、ニンニクも効かせます。
材料は、鶏肉、砂ずりに、豚肉も加わり旨みをアップさせ、最近はすき焼きのように卵に浸していただくことも。
蔵のまかない料理が杜氏のコミュニティーなどを通じて広まります。その過程で材料も多彩になり、味付けも工夫され、今のような美酒鍋になったようです。
アレンジが加わった今も、昔と変わらずシンプルな味付けなので素材本来の味を楽しめる料理です。加熱することでアルコール分は抜けるので、お酒が苦手な人はもちろん、幅広い年代の人が食べることができますよ。
美酒鍋のおいしさを引き上げるコツは?
飲食店で提供される美酒鍋は、具材が用意され、作りながら食べることが一般的です。
ですから、作り手の腕もおいしさの決め手になります。
おいしく作るコツは、たっぷりのお酒で煮ないこと。
美酒鍋は炒め煮なので、素材がこげない程度にお酒を加えます。ただし、野菜炒めにならないように、酒の香りも効かすこともお忘れなく。
美酒鍋に使うお酒は「本醸造」がおすすめ
本醸造のお酒はお燗にしてもおいしく、加熱することで旨みが増します。
一緒にいただくお酒も、本醸造タイプが相性抜群。
賀茂鶴酒造のお酒でいえば「「特別本醸造 超特撰特等酒」と一緒にいただくと、お酒もお鍋も旨味が増幅して美味しいです」。新谷さんのおすすめも参考にしてみてください。
美酒鍋は味付けがシンプルなだけに、材料一つ一つが味わいに大きく影響します。使うお酒が違えば味わいも変わります。
飲食店各店では特徴ある美酒鍋が提供されているので、東広島に来られた際にはお気に入りの美酒鍋を探してみてください。
そしてぜひ、東広島の日本酒もご一緒に♪
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